東京駅に降り立った私は、早速大嘗宮へ行こうと思いました。
駅構内でも大嘗宮一般参観のアナウンスが流れていました。
大学の4年間東京に住んでいた私にとって、東京など庭も同然でした。
駅構内の地図や、スマホで見る限りでは東京駅から十分歩ける距離でしたので、歩くことに決めました。大嘗宮に行った後は渋谷に行こうと思っていましたので、十分に時間に余裕をもって出発しましたが、とにかく迷わずに大嘗宮に着くことが大切なのです。
大嘗宮。つまり皇居。つまり江戸城ですね。
私は残念なことに東京に4年間住んでいながら東京駅の目の前にある江戸城に行ったことが無かったのです。ですから今回は尚更楽しみなんです。
東京駅を出ると、「大手門」の看板が出ていました。
私からすれば何でも良いのです。
まずは江戸城に着けば大手門だろうが何だろうが良いのです。
後のことは大手門に着いてから考えれば良いのです。
違いますか。
信号待ちをしていると江戸城に行こうとしている人たちが本当にたくさんいました。
確かに相当混んでいましたが、東京に慣れている私からすれば「まあこんなものだろう」という感じでした。
初めての江戸城に、私は迷わず大手門から入りました。
すると、帰ろうとする人たちはスゴイ行列なのですが、私の進む方向は不自然なほどかなりスイスイ進めるのです。
「一般参観は今日一日というワケでもないし、人は多いけどけっこう流れるんだな」と思っていたところに、警察官が2人待ち受けていました。
さすが大嘗宮、手荷物検査というわけです。
「荷物を開けていただけますか。…衣類などですね」
「お茶ですね。一口飲んでいただけますか」
まあ、もちろん普通の十六茶でしたので、やましいことの全くない私は普通に飲みました。
「それではお通りください」と言われましたが、あまりのスムーズさに念のため、「ここから大嘗宮は行けますか?」と一応訊いてみました。
すると「ここからは行けません。こちらは東御苑の入り口になります」と言われました。
私は「なんだってや」と思いました。
警察官は気の毒そうに「大嘗宮に行かれる方は、坂下門の方にお回りください。では、お戻りになりますね。列に並んでお戻りください」と私に言いました。
その列は私が先ほど見た、「帰ろうとする人たちのスゴイ行列」でした。
この後渋谷に行こうとしている私に躊躇している時間はありませんでした。
坂下門に向かわなくてはなりません。
江戸城。それは太田道灌が築城し、徳川家康公が改修した防御の固い城でした。
城というのはいかにして攻め入る敵の動きを鈍くさせるか。
動きにくくさせるか。
時空を越えた徳川家康公の策略に私はまんまとはまり、江戸城の構造と信号に、延々待たされるのでした。
最初に確認しておけば…。