ペイントマークの消し方から始まってレンズコートの話になっていますので、今回は反射防止コートの話をします。
テストレンズと実際の商品のレンズを用意して、真っ白な紙の上に置いて見てください。かなり明るさが違うことが実感できると思います。黒いトレーなどの上でも違いはわかりやすいと思います。
反射防止コートの施されていないレンズ(この場合はテストレンズ)に入ってくる光の大部分は透過しますが一部分はレンズの前面と後面とで反射します。
どのくらい反射するかと言いますと、前面で4%、後面でも同じく4%、合わせて8%反射し、実際の可視光線透過率は約92%になります。使っているレンズが1枚だとしてもこの調子です。テストレンズは近視か遠視、乱視、そして累進レンズのことを考えれば3枚くらい使うことが多いと思います。3枚テストレンズを使ったとすれば反射率は約24%、強度数であれば反射率はさらに増してしまいます。商品のレンズとは違って1枚のレンズではないためにレンズ同士の間にはもちろん空間がありますから出来上がるメガネの見え方に比べると見えにくい要素を大分取り込んでしまうことになります。
テストレンズに対し、商品のレンズはもちろん複数枚重ねて使用することなどありえませんし、異なる薄膜物質を何層も重ね、反射率がゼロに近づく波長域を増やし、透過率が99%を越えるようにした多層膜コートが主流になっています。メーカーにもよりますが、レンズの反射を見たときに緑色に反射して見えるのが反射防止コートの色です。
これを知らなかった頃の私は、ごくたまにではありますが、測定中に0.25Dのレンズを入れて、「こちらの方が少しクッキリするはずです」と言おうとするなり「さっきの方が良いけどなあ」と言われて心の中で「…?…なんだってや…?0.25D負荷したのに見えづらくなるってどんな眼なんですか…?」となっていたんですが、これを知ったときに謎が解けました(全ての原因が反射と決めつけるのも危険だとは思いますが)。